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2012年12月15日 (土)

ことば遊びコレクション

ことば遊びコレクション/織田正吉(講談社現代新書,1986)
 古今東西――といっても、ほとんどは日本語に関するものだが――の「ことば遊び」を、類型ごとに解説した入門編とも言うべき本。全5章構成。
 1「コスモスと電話をかける女かな――しゃれと語呂あわせ」。「汚職事件」と「お食事券」というベタな聞き間違いの話から始まって、だじゃれ、掛詞、縁語、パロディ、語呂あわせ、物づくし、などを紹介する。最後はかんべむさしのとんでもない言語遊戯作品「集中講義」が出てくる。
 タイトルの俳句は、昭和の中頃に映画界で活躍した丸山章治の作品。この人は、「君がため西瓜も辞せず喰いにけり」とか「向日葵や今日も暇あり昼寝せん」とかいったダジャレ俳句ばかり作っていたらしい。けれど、ダジャレでも季語がちゃんと入っているところが律儀というか…。
 2「祇園の擬音――早口言葉と隠題」は、前章に続いて、言葉の「音」による遊びの数々。早口言葉、押韻など。「○○さん○○じ」のパターンに合う言葉を揃える「山号寺号」なんてことば遊びも出てくる。
 タイトルにある「隠題」とは、特定のテーマ(題)に沿って言葉を文章の中に隠していくこと。
例えば、江戸時代の雑俳「秋の蚊が吸はうとするが身の終り」には、「国名」が隠してある。安芸、加賀、周防、駿河、美濃、尾張――というわけ。駅名だけで作った文章、なんてのも出てくる。どうも1章と内容が重なっているような気もするが…。
 3「鳥鳴く声す――いろは歌とアナグラム」。仮名のすべての文字を使い、しかも同じ文字を二度使わない詩――いろは歌の類は、日本語独特のことば遊びらしい。確かに、ヨーロッパ系の言語ではまず無理だ。26文字の文章の中で、同じ母音を二度使わないというのが不可能だからである。この章では、「いろは歌」の先行作品から、現代の新作まで、様々な「四十七音歌」が35編も紹介されている。他に様々なアナグラムを取り上げるが、こちらは日本語よりも英語が中心。
 4「一ぴき二ひきさんまのしっぽ――折句」。数え歌など、ある言葉を折り込んだ文を折句というのだそうだ。「もっとも古い言語遊戯」としての折句歌、人名を折り込んだ英語の詩、記憶法としての折句、アクロニムなど。ワードスクエアやクロスワードもこの章に出てくる。
 5「さかさのさかさはさかさ――回文」が、最終章。著者の見解によれば、ことば遊びの最終形は回文らしい。確かに、困難さの点では、「いろは歌」と並んで、本書で解説されている言葉遊びの中で一、二を争う。丁寧に回文作成のコツまで教えてくれている。

 著者は放送作家出身のエッセイスト。「日本笑い学会」の理事を務め、『笑いとユーモア』、『ジョークとトリック』などの著作もある。そのためか、本来「ことば遊び」というのは、文学や言語学の世界でも重要な役割を果たしているのだが、本書ではもっぱら純粋に「遊び」の側面に焦点を当てている。
 本書に出てこないか、ほとんど触れられてない「ことば遊び」も考えてみれないろいろありそうだ。文体模写、なぞかけ、判じ物、創作文字、創作熟語、創作ことわざなど。それに、クロスワード以外の言語ゲームの数々。
 レトリックやナンセンスの世界も広く言えば「ことば遊び」かもしれないが、そのへんを突き詰めていくと「文学」との境界がわからなくなる。ことば遊びの世界はまだまだ広大なのだった。
 本書は、このテーマを扱った一般向けの著作としてはかなり古い方に属していて、最初にも書いたように、ほんの入門編なのだが、その広大な世界への興味をかき立てる役割は十分に果たしている。(ちなみに、絶版になって久しいようだが、Amazonには多数出品されている。)

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