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2017年11月20日 (月)

風(一語の辞典)

風(一語の辞典)/一海和義(三省堂,1996)
 たった100ページの本。この<一語の辞典>シリーズはどれもこれくらい。他に「自然」、「こころ」、「性」、「神」、「義理」など、全部で20冊が出ていた。
 本書のテーマは、「風」(ふう、かぜ)という一つの言葉だけ。その語義、歴史、用法、熟語など、言うならば辞書の中の「風」の項目を思い切り拡大したようなもの。

 ページ数は少ないが、12の章に分かれている。内容は次のとおり。

「「風」の中にはなぜ「虫」が 風の字義」:風という字そのものの変遷を辿る。元は風という字の中は「虫」ではなくて、「日」だったとのこと。秦朝以降に変わったらしい。さらに「虫」という字の本来の意味も教えてくれる。
「飄・颯・諷 風ヘンの字」:「風」を部首とする文字は『説文解字』ではわずか13字だが、大漢和辞典では244字に増えている。ほとんどが、使われない字戸のこと。数だけ多くてもあまり意味はないのだった。
「風と風邪 風と病気」:風はなぜか病気と関係が深い。痛風、頭風、破傷風、風疹など、風の字を使う病気いろいろ。
「春風と風車 風の読み方」:日本語で風の字にあてる音は、かぜ/かざ、フウ/ブウ/プウ/フ/ブ/プ。フウは漢音、フは呉音。他は音便による変化。
「風伯・飛廉 風の神」:ギリシャ神話に風の神がいたように、中国にも風の神がいた。タイトルの飛廉、箕伯とは風の神の呼び名。
「風と色事 風流の語義」:風の字の意外な裏面。中国では、「風」の字はエロティックな意味で使われていて、唐詩では「風情」は、色気、欲情を意味していた。
「国風・風騒 風と文学」:文学作品に現れる風。詩経「国風」から和歌まで。おまけに「風」のつくタイトルの作品の作者あてクイズもついている。「風立ちぬ」、「風と共に去りぬ」、「風の歌を聴け」、「風の谷のナウシカ」など、全30問。
「風は大地の噫気なり 中国古典の中の風」:風の出てくる中国古典、漢詩。著者の専門分野だけに、典拠が実に豊富。
「風前の灯・馬耳東風 風と諺・成語」:風の出てくる古今東西のことわざ、故事成語など。「子供は風の子」、「風薫る」、「風上に置けぬ」、「風前の灯」、「明日は明日の風が吹く」、「馬耳東風」、「風林火山」…。
「春一番・空っ風・イエバエ 風の名前」:『風の事典』という本によると、日本の風の名前は、2145あるとのこと。
「風当たり・親爺風・風土・学風 風(かぜ)と風(フウ)の多義性」:最後は、風を使った言葉をあれこれと挙げて、風のとらえどころのなさを考察。

 薄い本だが中身は実に充実している感がある。だが考えてみると、辞書の一つの項目を100ページにわたって解説しているようなものなのだから、充実しているのは当たり前か。

Kaze

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