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2019年3月29日 (金)

ことばのロマンス

ことばのロマンス/アーネスト・ウィークリー;寺澤芳雄、出淵博訳(岩波文庫,1987)
 去年刊行された『英単語の語源図鑑』はよく売れているらしい。語源に興味を持った人が急に増えているわけではなくて、英語を勉強するための本として売れているわけだが。
 本書は、英単語の語源をテーマにしたエッセイ。著者は100年くらい前のイギリスの言語学者で、原題をThe Romance of Wordsという、1912年に刊行された本。
 イギリス人がイギリス人のために書いた本で、もちろん英語の勉強のための本ではない。そして、時代が違うとはいえ、現代の同じようなテーマの本とは、ずいぶんと書き方が違う。
 一言で言えば、饒舌にして無秩序。とにかく次から次へと語学的考察、歴史的エピソード、引用などを繰り出して、切れ目なく語っていく。改行がないまま、一つの単語から次の単語へと話題を変えるのもしょっちゅう。学者の果てしないおしゃべりを聞いているような感じ。
 一応13の章に分かれているが、どの章もあまり違いはない印象。わりとはっきりとテーマがあるのは、第4章「語と地名」と第12章「姓名」くらいか。
 つまりは体系性が全然ない。単語が出てくる順番にもまったく根拠がなさそうで、本当に気の向くままに語っているように見える。巻末に単語索引、人名索引がついているからいいようなものの、そうでなければどこにどんな語が出てくるのかさっぱりわからない。
 しかし、読んでる間はこれがけっこう面白いのだから不思議。要するに、読んで楽しむだけの本。タイトルが示すとおり、語源は歴史のつまったロマンスなのだ。ロマンスを感じない人は、読んでもムダだろう。
 ごく一部の例をあげると、意外な言葉が実は同語源(本書ではこれを二重語と呼んでいる)だったり、逆に関連がなかったりすることがわかる。例えば、一見関係なさそうな毎日(daily)と酪農(dairy)の語源は同じで、関係ありそうなペン(pen)と鉛筆(pencil)は、実は語源的に無関係だったりする。
 発音や意味の変化に関する記述も多くて、colonelをなぜ「カーネル」と発音するのかというかねてからの疑問も本書を読んでやっとわかった。また、発音といえば、日本人が区別できないとバカにされることが多い「R」と「L」。時代につれて「R」が「L」に変化したり、その逆だったりする例がけっこう多いことがわかる。あの二つの文字は、やはり向こうの人間にとっても似た発音らしいのだ。
 あと、読んで思ったのは、日常的に使いそうな言葉なのに、知らない単語がいかに多いかということ。これもごく一部の例で、patter(早口でしゃべる)とか、peruse(通読する、熟読する)とか、dainty(優美な)とか。専門分野の言葉とか動植物の名前とか、より特殊な単語になると、聞いたことのない言葉だらけ。
 とにかく、本書を読んでも、雑学的知識は増えるが、英語の勉強にはならないことは保証できる。ブログ主にとっては、こういう無駄話のかたまりみたいな本はけっこう好み。

 

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