« カブキの日 | トップページ | 物語アラビアの歴史 »

2019年10月20日 (日)

日本語の絶滅危惧種

日本語の絶滅危惧種/立石優(明治書院・学びやぶっく,2010)
 内容はタイトルからだいたい予想できる。日本語の中の死語、または死語に近づいている言葉を集めた本――ということになるだろうか。読んでみると、実はそうとも言い切れないところがあったのだが。
 いかにも言葉に着いての本らしく、ひとつの言葉について1ページ。見出しに続いて意味と用例、そして数行のその言葉に関するエッセイめいた文章がついている。
 著者は1935年の戦前生まれで、収録された言葉の多くは著者自身が慣れ親しんできたものと思われる。そうした、自分にとってもなじみ深い言葉がいつのまにか時代遅れになり、廃れていくことへの寂寞感、あるいは変転する今の社会への嘆息みたいなものがエッセイの部分には読み取れる。
 内容はまず取り上げる言葉を50音順に並べ、第1章「「あ行」の絶滅危惧語」、第2章「「か行」の絶滅危惧語」といった具合に各行ごとに1章をあてている。ただし、「や」「ら」「わ」の各行は数が少ないので第8章にまとめられている。
 その後、第9章「天文・気象・自然にまつわる絶滅危惧語」、第10章「家屋・家財に関する絶滅危惧語」、第11章「色彩・色調をめぐる絶滅危惧語」とテーマ別に3章。全部で200くらいの語が収録されている。
 実のところ、収録基準がよくわからない。多分著者の思い入れのある言葉を選んでいるのだろうが。
 最初は「相合傘」、次が「逢引き」。これは確かに、今となっては使うことの少ない言葉である。また、「乳母日傘」とか「活弁」とか「桑原くわばら」とか「馬糞紙」とか「モボ・モガ」とか、まぎれもない死語と言っていいだろう。
 しかし一方では、これが「絶滅危惧種」なのだろうかと疑問がわく言葉もけっこうある。
 例えば、「阿鼻叫喚」とか「一衣帯水」とか「曲学阿世」とか「明鏡止水」みたいな四字熟語。性質上、なかなか死語にはならない。
 また、「唐傘」とか「リヤカー」とか「欄間」とか「長持」とかは、実物を目にすることが少なくなっただけで、言葉が廃れたわけではない。そのものが目の前にあれば、そう呼ぶしかないだろう。
 あるいは、「黄昏」とか「爪弾き」とか「律儀」とか。今でも普通に使われる言葉だと思うが、なぜ収録されているのかよくわからない。
 結局のところ、言葉をだしにして、自分のノスタルジーを語りたいだけのような気がする。まあ、著者は日本語学の専門家というわけではなく作家なのだし、言葉についての本ではなくエッセイと捉えるべきなのだろう。古き良き日本の言葉への思いがつまった本なのだ。

Nihongonozetumetsukigushu

|

« カブキの日 | トップページ | 物語アラビアの歴史 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« カブキの日 | トップページ | 物語アラビアの歴史 »