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2020年5月10日 (日)

漢字のいい話

漢字のいい話/阿辻哲次(新潮文庫,2020)
 漢字に関するエッセイやコラムを集めたもの。中国の漢字史から現代日本の漢字文化まで、題材は幅広い。
 時間と空間を超えた漢字談義を楽しむことができるが、寄せ集めなので体系性はない。同じ著者の本でも、1冊まるごと書き下ろした本――例えば以前に本ブログで紹介した『漢字三昧』(2008年8月18日のエントリー)など――に比べると、やや散漫な印象はある。

 内容は4部構成。
「漢字はお好きですか?――まえがきにかえて」では、漢字を自動車やコンピュータになぞらえている。
 1<漢字を楽しむ>は、漢字の起源や歴史に関する話題。「虫歯の漢字学」、「「みち」の漢字学」など5編。
 2<文物と遺跡>は、中国の漢字史、さらに漢字を生み出した中国の歴史そのものについての、やや学術的な文章を集める。回想記や現地ルポが多い。「北京図書館の『説文解字讀』」、「段玉裁の故郷を訪ねて」など、6編。
 3<東アジアの漢字文化>は、現代日本と中国の漢字事情。日本については、地名の略語、国字、新常用漢字などの話題。中国については、外国語の表記や字体の話など。「この世に漢字はいくつあるのか」、「可口可楽・魔術霊・剣橋大学」など、7編。
 4<書と漢字>は、漢字表記の技術についての話題。「筆記用具が書体を決める」、「書はいつから書なのか」、「漢字のソフトとハード」の3編。
 最後に、「漢字はどこへ行くのか――あとがきにかえて」は、文字コードの話で、第4部の続きみたいなもの。
 単行本が出たのが2001年なので、「今ではコンピュータが六千以上もの漢字を簡単に処理できるようになった」などと書いているが、今ではユニコードが普通に使えるので、コンピュータで使える漢字は数万字に増えている。今から見れば、「たった六千」なのだ。

 ところで阿刀田高の解説には、「総じて本書は軽いエッセイ集だが、むつかしいところはかなりむつかしい。だから、そんなところは、/――ふーん、そうなんだ――/ と瞥見してよかろう」などと書いてある。「むつかしいところ」とは、第2部の「北京図書館の『説文解字讀』」あたりを指しているのだろうか。しかし、ブログ主みたいな文字好きには、そういうところこそが面白いのである。「むつかしい」を敬遠して、何の面白みがあるというのか。

Kanjinoiihanashi

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