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2020年7月21日 (火)

アーサーの言の葉食堂

アーサーの言の葉食堂/アーサー・ビナード(アルク,2013)
 英語学習の会社アルクが出しているクラブアルク会員専用誌『マガジンアルク』の連載コラム「日々のとなり」から選んだエッセイ集。1編あたり3ページの短い文章を64編収録。
 内容は、だいたいのテーマというか、話題の種類により4章に分かれている。日常生活で見かける英語が主なネタだが、話題は日本の社会や政治、世界情勢へと広がっていくことが多い。

 一章「ようこそ言の葉食堂へ」は、「ビンラディン・ドリンク」、「なめる原爆、クシャミする核」など12編。
 社会ネタが多い。というか、日常的に身辺にあるちょっとした食べ物や光景(主に看板)から、社会的な問題につなげていくパターンが多い。そして著者のかなり徹底したリベラルな立場が一番よく見てとれる章でもある。反核、反原発、反TPP、大和ミュージアムや日本の対北朝鮮政策への批判など。

 二章「誤訳の海にこぎ出す」は、「ドルフィンはいるか?」、「誤訳の海」など18編。
 最初の「ドルフィンはいるか?」は、要するに反イルカ漁の立場をやんわりと主張したもの。こういう社会批判も相変わらず多いが、日本で見かける「変な英語」ネタも増えてくる。実は、本書で一番面白いのはこの部分。
 例えば、「アルファベットの罠」では、ホテルで見かけた「避難タラップ」=「EMERGENCY TRAP」というひどいが出てくるが、これは確かにひどい。これじゃ罠だ。
 一方で、「外来語の尻尾切り」では、「サービス・フロント」という言葉に怪しさを感じている。英語の"FRONT"には、犯罪組織の隠れ蓑の意味があるからだという。これは英語国民独特の感性で、「そんなこと言われても…」という気もする。

 三章「がんばればニッポン」は、「八雲の骨と神の数」、「片仮名スヰッチ」など18編。この章も「変な和製英語」ネタが中心だが、3.11から間もない頃に書かれたと思われる「日本のガンバリ」には、例外的に英語のことが何も出てこない。日本にあふれる「がんばろう!」のスローガンに違和感を覚える内容。まあ、似たようなことを言ってる人は多い。
 また、「ピザをかぶりクレーン車をたたむ」は、日本のピザハットの看板に書かれているロゴマークが、カタカナのせいで帽子にしか見えないという話。Hutは「小屋」だから、あれは当然小屋の屋根なのだ。
 珍しく日本人の英語を賞めているのが、「ようこそパロディーズへ」。日本の英語パロディ看板のセンスに感心している。それが風俗店だったりするのだが。

 四章「万葉マンション入居者募集中」は、「鯨の耳に念仏?」、「マンションに枕を並べて」など15編。日本語そのものをテーマにしたエッセイが比較的多い。そして本の話題がよく出てくる。著者は詩人が本業なのだから、こういうテーマはもっと多くてもいいと思う。
「東西東西」は、「東」と「西」の語感の違いについて、「東」の方が遙かに豊かなイメージを持っていて、「西」にはそれがないかわりに一種の野性味がある、となかなか鋭いことを言っている。日本人の感じ方とは少し違うかも知れないが、こういうのも詩人の感性なのだろう。

Kotonohashokudou

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