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2020年8月26日 (水)

漢字の魔力

漢字の魔力 漢字の国のアリス/佐々木睦(講談社選書メチエ,2012)
 漢字についての本は今までずいぶん読んできたし、本ブログでも何冊かは紹介した。
 例えば、『日本の漢字』笹原宏之(2007年4月13日)、『漢字三昧』阿辻哲次(2008年8月18日)、『漢字と図形』渡辺茂(2015年2月21日)、『漢字の字形』落合淳思(2019年9月23日)など。なぜか「漢字の本」が好きで、ついつい読んでしまうのである。
 本書を読んだのは数年前だが、それ以前やそれ以前に読んだあまたの「漢字の本」と比べても、そのユニークさは類を見ない。
 何しろ、書き出しからしてこんな感じ。

 今晩は中秋の名月。アリスちゃんはお姉さんのそばに座り、月餅をほおばりながら時折お姉さんの読んでる本をのぞきこんでいましたが、それにもだんだん飽きてきました。だってその本は絵ばっかりだったんですもの。
「漢字の書いてない本なんて何の役に立つのかしら?」

 ――という、漢字が大好きという変な少女アリスを狂言回しとして、漢字の国を旅していくという趣向なのである。
 もっとも、アリスが登場するのは各章の最初の4ページくらいで、本文は普通に書かれている。いくら何でも最初から最後までこんな調子では書けなかったらしい。
 とはいえ、本文もテーマとしてはユニークなものばかり。この本で紹介されているのは、日本の漢字ではなく、中国の奇想天外な漢字の世界なのだ。
 内容は9章構成。

 上の文章が出てくるプロローグに続いて、第一章「辞書にない漢字」は、中国の合体文字や転倒文字など、辞書にない漢字の数々。
 第二章「文字の呪力」は、漢字の発音を使ったことば遊びの世界。もちろん中国語での発音である。
 第三章「名前の秘密」は、人名と漢字の呪力について。君主や親の名前を徹底的に避ける「忌諱」の話も出てくる。
 第四章「漢字が語る未来」は、漢字の将来についてのマジメな話――ではなくて、漢字占いの世界。
 第五章「怪物のいない世界地図」は、地名と漢字の話。特に外国地名の漢字化について。すべての固有名詞を漢字化する中国ならではの話題。
 第六章「漢字の博物学」は、動物名と漢字の関係を語る。クジラが魚ヘン、虹が虫ヘンになっているわけなど。
 第七章「絵のような漢字と漢字のような絵」は、漢字で描く「絵」。漢字を変形させて絵にしてしまうわけである。
 第八章「浮遊する文字――漢字のトポグラフィー」は、今までの話題とは一転して、近代中国と漢字の社会史みたいなもの。漢字そのものからはちょっとはずれるが、テーマとしては一番面白い気がする。
 第九章「漢字が創る宇宙」は、中国の漢字まみれの宇宙を自在に語る。則天武后と新漢字の話など。日本の話も最後に出てくる。

Kanjinomaryoku

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