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2020年11月19日 (木)

猫の世界史

猫の世界史/キャサリン・M・ロジャーズ;渡辺智訳(エクスナレッジ,2018)
 原題は、単にCat (2006)。猫そのものの歴史というより、猫に関わる世界の文化を語るのがメイン。特に文学の中の猫に詳しい。
 内容は6章構成。

 1章「ヤマネコからイエネコへ」は、家畜としての猫の歴史を語る序説的な章。先史時代から古代エジプト、中世、18世紀頃まで。西洋が中心だが、中国や日本への猫の伝播にも少し触れている。
 2章「災いをもたらす猫、幸運を呼ぶ猫」では、人間が猫に対して抱く「不思議とも言える感覚」を、実例を挙げて紹介している。16世紀から17世紀、ヨーロッパでは魔女の使い、悪魔の化身として迫害されていた猫の歴史。逆に「長靴をはいた猫」に代表される、幸運をもたらす猫の物語など。日本の招き猫や、猫の恩返しの昔話にも触れている。
 3章「ペットとしての猫」。愛されるペットとしての猫の歴史は、ヨーロッパではそう古くはない。第2章にも書かれていたように、16世紀頃のヨーロッパでは、まだ猫に対する愛情は珍しいものだった。だが17世紀末、貴族の間で猫が広く飼われるようになって以降、猫好きはどんどん広まっていく。ただ、猫好きが度を超して「猫が本来持つ不穏な側面」まで無視されるようになる。
 4章「女性は猫、あるいは猫は女性」は、猫の擬人化、あるいは人の擬猫化がテーマ。特に猫と女性の関わり、猫が女性と同一視される現象について詳しく語っている。
 5章「猫には、猫なりの権利がある」では、19世紀以降、人間と対等の存在として見られるようになった猫を、多くの文学作品や絵画から引用しながら語る。ある意味本書のハイライトとも言える章。登場する作家は歴史に残る文学者からSF作家まで多種多様。日本の作家も出てくる。主な名前だけでも、シャトーブリアン、デュマ、キプリング、ジェローム、ギャリコ、アンジェラ・カーター、夏目漱石、サキ、村上春樹、ドリス・レッシング等々。
 6章「矛盾こそ魅力」は、現在の猫人気について。「タイトルに「猫」とあるだけでどんな本でも売れるくらいだ」とあるから、ブームは日本だけの話ではないらしい。

 全体を通じて、著者の猫好きぶり――それでいて、猫が本来獰猛な肉食獣であることを忘れていない姿勢が伝わってくる。上にも引用した「猫が本来持つ不穏な側面」というのは、なかなか卓抜な表現ではないだろうか。

Cat

 

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