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2021年2月23日 (火)

ビッグデータ・コネクト

ビッグデータ・コネクト/藤井太洋(文春文庫,2015)
 ハイテクサスペンス小説。官民共同の巨大システム開発の裏にひそむ陰謀を、刑事と犯罪者のコンビが追う。
 本作は、『SFが読みたい2016』の日本部門11位に入っているが、SF感はほとんどない。おおむね現在のテクノロジーで可能なことしか出てこない。それだけに、誰か本当にこんなことをやろうとしている人たちがいそうで怖いのだが。
「こんなこと」とはどんなことかというと――。

 舞台は関西地方。自治体首長(元検察)と警察幹部が、滋賀県の山中に建設された巨大複合施設「コンポジタ」の住民サービスシステムを悪用して、全国規模の個人監視システムを作ろうとする。彼らの頭だけでそんなことが考えられるわけはなくて、裏にいるのはコンサルタントと称する守矢という男。実は情報犯罪の大物で、そのバックにはさらに大きな力が…。
 ――というような裏事情は、話が進むに連れて徐々にわかってくる。
 最初は、「コンポジタ」のシステム開発の中心人物だった月岡という男が誘拐される事件がきっかけ。「コンポジタ」計画を中止しろという脅迫状と、切り取られた月岡の指が送られてくる。
 さらに事件の関係者として(実は無理矢理関係者にしたてられた)、武岱という男がからんでくる。数年前にコンピュータウイルス事件の容疑者として逮捕されながら、その後不起訴になった男。
 京都府警サイバー犯罪対策課の警部万田は、捜査協力者となった武岱とコンビを組んで、事件を追うことになる――というのがメインのストーリー。
 クライマックスは、「コンポジタ」の情報システムが、武岱の仕掛けによってその恐るべき本性をさらけ出すところ。この場面の劇的効果はなかなかのもの。
 しかし、そこまでの話――特に前半は、錯綜した状況の中でもつれた糸を少しずつ解きほぐすような展開で、少々じれったくなる面もある。登場人物が多い上に、背景の組織が込み入り過ぎていてなかなか頭に入ってこない。バラバラに見えていた要素がつながってくる中盤からは、どんどん話が加速していくのだが。
 そして、複雑にからみあった物語の中から浮き上がってくるのは、情報産業現場の恐ろしい労働実態。そんな現場で「壊れて」しまった二人の男、月岡と武岱が、「コンポジタ」を阻止し、日本にディストピア社会が出現する危機をぎりぎりのところで防いだのだった。
 監視社会のディストピアと情報産業現場の地獄――ITの二つの負の側面を見せつける。面白いんだけど、読んだ後でなんとも暗澹とさせる小説だった。

Bigdataconnect

 

 

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