英語の謎
英語の謎 歴史でわかるコトバの疑問/岸田緑渓、早坂信、奥村直史(角川ソフィア文庫,2018)
『歴史から読み解く英語の謎』(2002)の、改題・文庫化。
英語の語法、発音、綴り、文法、語彙などに関する素朴な疑問を、英語史から説明する本。
素朴な疑問と言っても、これまで「そういうものだ」と思っていて、疑問にも思っていなかったことが多い。
例えば、「thanksはなぜ複数形なのか」とか。「It rained.のitは何か」とか(itは神のこと、というのは俗説らしい)。「oneはなぜ「オネ」と発音されないのか」とか。「will notの短縮形はなぜwon'tなのか」とか。「be動詞はなぜam,is,areと変わるのか」とか。「goの過去は、なぜgoedでなくwentなのか」とか。
そんな英語の「謎」の数々を掘り起こし、なぜそういう表現や発音になったかという理由を、歴史的に解明していく。
例えば、be動詞やgoの変化の話には「意外な真実」があった。元は別の動詞が変化形として組み込まれていたのだという。
また、ところどころに引用されている10世紀頃の英語というのが、まるで別の言語みたいで興味深い。
こんな感じである。()内は今の英語に直したもの。
Eadige synd tha the nu wepath, forthamthe hi beoth gefrefrede.
(Blessed are those who now weep, because thay shall be comformed.)
英語の語源や歴史についての知識が詰まっているが、読んでも別に英語力が向上するわけではないと思われる。「語学」ではなく、「英語学」の本なのである。