建築

2007年7月 9日 (月)

間取り図の世界

「間取り」の世界地図 暮らしの知恵としきたり/服部岑生(青春新書INTELLIGENCE,2006)
 タイトルは「世界地図」となっているが、全体の約3分の2は「日本の「間取り」とその変遷」と題する、間取りから見た日本住宅史になっている。
 第1章でダイニング・キッチンの誕生から現代に至る、戦後日本の住宅の間取りの変遷を紹介。第2章では時代を遡って、江戸時代後期の武士の屋敷から、明治の和洋折衷住宅、有名な同潤会アパートなど、昭和初期までの間取りの歴史を語っている。
 一旦現代までの流れを紹介しておいてから、さらに遡ってその源泉をたどる、読者を掴む構成という点では、うまいやり方である。
 3章では「南向き信仰」、「ドアの内開き・外開き」、「サザエさんの家の間取り」といった小さなトピックスを扱っている。それにしても、「世界」がなかなか出てこない。
 第2部でやっと世界各地の間取りが出てくるのだが、量にして40ページしかない。もう、付け足しみたいなものである。そういう意味では少々看板に偽りあり。字が大きくて中身もやや薄いような気もする。まあ、「間取り図」そのものが好きな人間としては、それなりに楽しめたから別にいいのだが。
 しかしこの手の本を新書で出すというのは、ページ的にもスペース的にも、やはりちょっと無理があるようだ。間取り図をディテールまで楽しむには、もう少し判型を大きくして欲しいところである。

「間取り」の世界地図暮らしの知恵としきたり

 そんなことを思っていたら、世の中には「間取り図」を見ること自体がおもしろいという、似たような趣味の人がいるようで、ちょっと変な間取り図ばかりを集めた本が出ていた。

間取りの手帖 remix/佐藤和 歌子(ちくま文庫,2007)
 文章はほとんどない。ひたすら間取り図だけが各ページに一つずつ載っているだけ。すばらしい。
 それぞれの間取り図に短いコメントがついてる。「ぐるり」とか、「うにょうにょ」とか、「地味な生活」とか、「今も尖ってるよ」とか、「何もできない」とか、「確信犯的収納狂」とか。それ自体では意味をなさない、しかし間取り図に添えられると、そこはかとなくおかしいコメントの数々。
 ここに掲載されているのはすべて実在する賃貸住宅の間取りらしい。シンプルなものから奇怪なまでに複雑なものまで、丸いのやら三角のやらギザギザのやら、中には実在することが信じられないような変な間取りもいくつか。中に入ったらどんな風に見えるのか、想像力をそそられることこの上ない。(ちなみに、間取り図だけで、立体図や写真は一切ない。)
 ミステリで犯行現場の説明に使われるだけが間取り図の使い道ではない。間取り図には無限の想像を生む余地がある。
 解説で南伸坊が書いているように、「間取り図というものは、それを見る人の想像力を刺激してやまない」ものなのだ。

間取りの手帖remix

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