ニッポンの残念な鉄道
ニッポンの残念な鉄道/野田隆(光文社知恵の森文庫,2020)
乗り鉄として有名な著者による、ユニークな雑学系鉄道本。
元は「東洋経済オンライン」というサイトの中の「鉄道最前線」に連載されていた「独断で選ぶ鉄道ベスト10」というウェブ記事。「ベスト10」と題しながら、「残念な駅10」が好評だったので、以後「残念な○○」シリーズが続くことになったという。
しかし「残念」と言ってもそんなに辛口なわけではなく、むしろ鉄道愛にあふれている。毒のなさが物足りないくらいである。
内容は3章構成。
第1章 「ざんねん」だからこそ味がある日本の鉄道「なんでも10」。
これが本書全体の3分の2を占めるメインコンテンツ。中はさらに四つのテーマに分かれている。
「「ざんねん」の王道“不便”で残念な駅」は、不便な駅を取り上げている。「残念なターミナル駅」10、「残念な新幹線駅」10、延伸すれば便利な駅10、など。
「昔日のにぎわいはいずこへ…“栄光は過去に”で残念な路線」は、さびれた路線。「残念な特急列車」10、復活してほしい列車10、など。
「何かがずれている“ミスマッチ”で残念な駅・路線」は、実態とイメージとのギャップが残念な駅や路線。都心の「閑散とした駅」10、「残念な路線名」10、など。
「無粋だったり地味だったり…で残念な列車・路線」。このへんになってくると、何が残念なのか趣旨がよくわからなくなってくるが、「残念な車両」10、本数が少ない「残念な駅」10、など。
第2章「奥が深すぎるおもしろ駅名・列車名の雑学」は、ただの雑学を集めた章。「おもしろ駅名」10、「読める? 珍駅名」10、などで、別に残念なわけではない。
第3章「やっぱりこれだけは乗っておきたい日本の鉄道ベスト10」になると、残念どころか、普通のベスト10である。気になる都会のターミナル駅ベスト10、雄大な山を眺められる車窓ベスト10、など。
ただ、上野駅や両国駅のように、なぜか「残念な駅」とこのベスト10の両方に名前が入っている駅もある。結局のところ、著者のいう「残念」は、愛着と表裏紙一重のものだったようだ。まあ、最初からだいたいわかっていたことではあるが。