ほんほん本の旅あるき
ほんほん本の旅あるき/南陀楼綾繁(産業編集センター,2015)
この著者については、以前(といってももう10年以上前になるが)、本ブログで『一箱古本市の歩き方』という本を紹介したことがある(2010年1月18日のエントリー)。
そこでは、著者が始めた一箱古本市というユニークな活動や、日本各地のブックイベントのことが、情熱と遊び心たっぷりに語られていた。
本書はその続きみたいな本。日本各地で開催されるブックイベント、一箱古本市、さらには地方でユニークな文化活動を続ける人々を訪ね歩いた現地ルポが集められている。北は盛岡から南は鹿児島まで。最後に地元である東京で締めくくる14編。
鹿児島編の最後に書いているとおり、「箱に先導されて各地を回る」旅の記録である。
各編とも冒頭に「旅あるきMAP」がついている。ただし基本的に著者が訪ね歩いたところが書いてあるだけなので、一般的には参考にならない。本文を読む時には便利。さらに本文中にも写真とイラストが豊富に入っている。イラストを描いているのは、イラストレーターの佐藤純子。緩いタッチが本の雰囲気によく合っている。
著者が訪ねるのは、ユニークな本屋に古書店、昭和っぽい市場や商店街、昔ながらの喫茶店に食堂――といったところ。そこにブックイベントや地域おこしに関わる人々が登場する。出会う人々は、みんな活動的で個性的。著者自身も含め、本や文化や地域への熱い思いがすべてのページにあふれている。
ただ、どこへ行っても同じようなところへ行って同じようなことをして、同じような種類の人々とばかり会っているような気もする…。ブックイベントという「仕事」で行く時は仕方ないとして、私的な旅で行く時くらいは、ちょっと違うことをしてもいいんじゃないだろうか。
まあ、これはそういう場所や人々からなる「世界」について書いた本なのだから、仕方ないのだろう。ブログ主もそういう「世界」が嫌いではないのだし…。
本書で著者が旅した場所は以下のとおり。
盛岡(岩手県)―朝市と三人の木村さん
秋田(秋田県)―川反中央ビルにはブク坊がいる
石巻・仙台(宮城県)―“まちの本棚”が生まれた
新潟(新潟県)―旅は不器用
富山・高岡(富山県)―『まんが道』と鱒寿司
津(三重県)―カラスの目で町を見る
鳥取・松崎(鳥取県)―横に長い県をゆく
松江・隠岐(島根県)―水の町から海のある町へ
呉・江田島(広島県)―コミさんに導かれて
高知・阿波池田(高知県・徳島県)―うだつのある町で
北九州(福岡県)―洞海湾を渡って
別府(大分県)―温泉から奇想が湧き出る
鹿児島(鹿児島県)―ぼっけもんのいる国
都電荒川線(東京都)―東京の町を旅あるきして