日本の城の謎
今年最後の記事になるが、特に普段と変わらない。今回は、20年以上前に出た城関係の本。
城をテーマとした本やムックは最近出版点数がやたらと増えている気がするが、こういう本の需要は、いつの時代もある程度あったのだ。ただ、今出ている「城本」とは少々傾向が違う。
日本の城の謎 (上・下)/井上宗和(祥伝社ノン・ポシェット,1986)
上下巻になってはいるが、最初から2冊本で出版されたものではなく、文庫に収録するにあたってこういう構成になったらしい。
上巻は「築城編」、下巻は「攻防編」になっているが、内容がはっきり分かれているわけではない。、このサブタイトルに大して意味はないと見た方がいい。
内容だが、城にまつわる特定の話題を中心に、複数の城を取り上げて歴史エピソードを紹介するのが基本パターン。
上巻では、1「なぜ秀吉は城攻めの天才と呼ばれるのか」では、城攻めの一般論から始まって、武田勝頼の長篠城攻め(失敗)、豊臣秀吉の鳥取城攻略、石田三成の忍城攻め(失敗)、徳川秀忠の上田城攻め(失敗)に話題が及ぶ。一つの話題を足がかりに、関連する話題が次々と移り変わっていく。目次や各章の始めに、登場する主な史跡や人物の一覧が出てくるが、なぜか忍城は出てこない。史跡になってないからか。
また、上巻でいきなり城攻めの話題が出てくるので、このことからも、「築城編」、「攻防編」というサブタイトルに大して意味はないことがわかる。
続いて、2「なぜ名城には人柱伝説があるのか」では、各地に伝わる人柱の言い伝えに関連して、江戸城、松江城、郡上八幡城、宇和島城が、3「ほんとうに信玄は城を造らなかったか」では、武田家にまつわる「人は石垣=城不要」説のインチキさや武田家埋蔵金伝説を語りながら、舞鶴城(甲府城)、躑躅ヶ崎館、要害山城、積水寺、金沢城、春日山城を、4「なぜ信長は安土城天守閣を築いたのか」では、織田信長や松永久秀の築城と近世城郭の起源を巡って、安土城、観音寺城、本能寺、大坂城、多聞城が取り上げられる。 5章以下は人物より城中心の話題が多くなり、「なぜ抜け穴伝説が生まれたのか」(姫路城、宇和島城、竜光院、熊本城、江戸城、金沢城)、6「なぜ大坂城の土塁は石垣に変わったのか」(大阪城、清洲城、小牧山城、二条城、江戸城)、7「なぜ難攻不落の小田原城は落ちたのか」(小田原城、早雲寺、堀越館、韮山城、石垣山一夜城)、「なぜ城の絵図は正確無比だったのか」(会津若松城、北ノ庄城、弘前城)といった具合。
城に対するアプローチとしては独特のものがあるし、内容もまともなのだが、この雑学本じみたわざとらしい章タイトルが少々目障りである。
なお、上巻の99ページから100ページにかけて、「戦国八名城」というのが出てくるが、他ではあまり聞いたことがない。越後春日山城、越前一乗谷城、能登七尾城、近江小谷城、美濃井ノ口(稲葉山)城、甲斐要害山城、近江観音寺山城、大和信貴山城。このうち、落城しなかったのは春日山城と要害山城だけだそうだ。
下巻「攻防編」も上巻と同じ路線だが、こっちの方が人物メインになっている。
1「なぜ、加藤清正は鉄壁の石垣を築いたか」では西郷隆盛、谷干城、加藤清正、黒田如水・長政親子と時代を超えた人物たちと、熊本城、福岡城を取り上げる。
2「なぜ、秀吉は三木城攻めに二年もかかったか」では、豊臣秀吉をメインに、三木城、犬山城、鳥取城、高松城(もちろん備中の方)、姫路城が、3「なぜ、藤堂高虎は築城の天才といわれるのか」では、藤堂高虎の事績と彼が手がけた城を中心に、宇和島城、今治城、津城、伊賀上野城、二条城、高知城が、4「なぜ、毛利氏は海岸線に城を移したのか」では、毛利一族と吉田郡山城、三原城、松江城、膳所城、広島城が取り上げられる。毛利氏と関係ない膳所城が出てくるのは、湖に面した水城だから。
以下、5「なぜ、江戸城は世界最大の城といわれるのか」(徳川家康と江戸城、大坂城、姫路城)、6「なぜ、上杉謙信は天下人になれなかったのか」(織田信長と上杉謙信、春日山城、一乗谷城、小谷山城、北ノ庄城)、7「なぜ、榎本武揚は新政府で活躍できたのか」(榎本武揚と五稜郭、松前城、竜岡城)と続く。
各章のタイトルがますますパターン化し、くどくなっている。ただ、おもしろいのは、各章のページ上に表記してある見出しが、タイトルと違ってすっきりしたものになっていること。上巻では同じだった。1「熊本城石垣の謎」、2「秀吉、三木城攻めの謎」、3「藤堂高虎、宇和島城の謎」、4「広島城、毛利水軍の謎」、5「難攻不落、江戸城の謎」、6「上杉謙信、春日山城の謎」、7「榎本武揚、五稜郭の謎」となっている。まあ、長い章タイトルがページ上の小さなスペースに収まらなかった、というのもあるだろうが、著者は本当はこっちのタイトルにしたかったのではないか。
上・下巻を通じて、同じ城が何回も出てくる。城がメインならこうはならない。やはり城の本というより、歴史の本なのである。










