空想軍艦物語
空想軍艦物語 冒険小説に登場した最強を夢見た未来兵器/瀬名堯彦(光人社NF文庫,2017)
戦前・戦中の冒険小説や未来戦記に登場する架空の軍艦、超兵器を紹介する本。『丸』の連載をまとめたもの。
この本、コンセプトはなかなか面白そうである。登場する架空の軍艦や兵器の多くは荒唐無稽なスペックで、そこがむしろ面白いというか、楽しみどころなのである。
だがいかんせん、著者が軍事の専門家で、基本的に空想物語に関心がないため、今一つノリが悪い。
なにしろ、現代の架空戦記の類はほとんど読んでないと言っている。「今日では未来戦記がまったく書かれていない」なんて書いているのを見ても、著者がこの分野に無関心なことがわかる。未来戦記なんていくらでも出てる。著者が興味がないだけなのだ。
それはともかく、題材そのものは、上にも書いたように興味深いものではある。
最初にいきなり出てくるのが、日本海軍の中佐が考え出したという驚異の「50万トン級戦艦」。大きければいいってもんじゃないぞと言いたくなる。しかもこの超巨大戦艦、主砲もサイズに合わせて超巨大になっているかというとそうでもなく、大和の主砲よりも小さい40センチ砲。それをただやたらと大量に搭載しているだけ。ちょっと発想が貧困としか言いようがない。
この後も、飛行潜水艦とか空中戦艦とか、浮かぶ飛行島とか潜水空母とか、未来兵器というより珍兵器と呼びたいような変なシロモノが次々と登場する。
オタク心を持ったライターが紹介すれば、さぞ面白い読みものになったと思うのだが、上にも書いたように、この著者の反応は今ひとつなのである。オタク的基礎教養とツッコミ力が足りない。
しかし、著者は昭和9年生まれ、本書の元となった「『仰天軍艦』夢ものがたり」連載時は70過ぎてたのだから、そんなオタク心を求めるのは無理なのだろう。読者の方が適宜ツッコミを入れながら読むしかないのである。